きものギャラリー
自然布コレクション
~自然を織りこむ手仕事のぬくもり~

人類が初めて手にした繊維は、絹でも綿でもなく、野に生える草や木の皮を裂き、撚り合わせて作られたものでした。
それは自然とともに生きていた時代の、人の知恵と祈りの結晶。
そんな原初の素材が持つ力強さと素朴な美しさを、現代に伝えるのが「自然布」です。
草木が織りなす柔らかな色、指先に感じる野趣、そして大地の息吹。 自然布を通して感じていただけることでしょう。

蓮糸織

蜘蛛の糸のように細い蓮の茎の繊維を撚り糸にし、手織りで織りあげた蓮糸織。
仏像や僧侶へのお袈裟を織り寄進したのがはじまりです。ミャンマーなどの一部地域で生産され、1mの布を作るために約1万本の蓮の茎が必要です。ひとつひとつ手作りで大変手間のかかる織りものです。 蓮糸は藕糸(ぐうし)といわれ蓮の茎から抜き出したクモの糸のような一本一本細い糸です。そのままでは、織物に使用することができないので、茎4~5本分の糸を板の上で手早く、こねる様に撚り(より)合わせて糸状にします。蓮(はす)の茎から採れる繊維で織られた布は、つややかさがあり、麻のようにさらりとした手ざわりが特徴です。指先に触れると軽やかで、通気性が高く、汗をかいても肌に張りつかず心地よく過ごせます。使い込むほどに繊維がやわらかくなり、しっとりと手になじんでいきます。
また、蓮の繊維は天然の中空構造を持っており、空気を含むため保温性にも優れています。そのため、夏は涼しく、冬はほんのり温かいという、季節を問わず快適に使える性質があります。自然素材ならではの優しい風合いと、環境にやさしいサステナブルな魅力を併せ持つ織物です。

紋織り木綿

通常木綿着物は平織りのものが多いのですが紋織りの木綿着物になります。
地紋があることで、生地の表面に微妙な陰影が生まれ、奥行きのある立体感と上品な光沢が感じられます。光の当たり方によって模様が浮かび上がるように見え、見る角度によって表情が変わるのも魅力です。 また、木綿でありながら特有の重たさやもたつきがなく、しなやかで柔らかな手触りが特徴です。まるで紬の着物のような自然な風合いと温かみがあり、日常使いにも上質さを感じさせる生地となっています。

亜麻紬

亜麻(リネン)の繊維にはペクチンが含まれているため、肌に触れてもチクチクせず、常にやわらかな感触が続きます。そのため、亜麻のきものは素肌に心地よく、思わず袖を通したくなる優しさがあります。 夏には汗をすばやく吸い取り、さらりとした清涼感を保ちさらに、繊維の中に空気を含むことで天然のサーモスタットのように働き、寒い季節には保温性を発揮して身体をやさしく包み込みます。 つまり、リネンのきものは一年を通して快適に纏える、四季に寄り添う素材なのです。
リネンは天然素材の中でも特に汚れが落ちやすく、耐久性に優れた素材です。洗濯を重ねるたびに風合いが増して柔らかくなり、白いリネンはより清らかな白さを帯びていきます。その清潔感と心地よい肌触りこそが、世界の一流ホテルがベッドリネンやテーブルクロス、バス用品などにリネンを採用する理由です。

葛布

葛布(くずふ)は、日本の自然が育んだ葛の繊維から織り上げられる布で、自生する植物を原料とするため非常に軽く、しかも驚くほど丈夫です。撚りをかけずに平糸のまま丁寧に織り上げることで、しなやかさと独特の透け感を併せ持ち、ほのかな光沢を放ちます。その落ち着いた艶やかな質感は、日本三大古布のひとつに数えられる所以でもあります。 葛布は、軽やかで通気性に優れ、盛夏でも肌にまとわりつかず、涼やかな着心地が魅力です。長く着るほどに生地が柔らかくなり、淡い飴色の艶が増していくため、年月とともに深みのある表情を楽しむことができます。自然素材ならではの温もりと上品な風合いを備えた葛布のきものは、まさに「育てる布」と呼ぶにふさわしい織物です。