美の逸品
~宮古上布~豊かな自然と風土が紡ぐ~

宮古上布は、沖縄県宮古島で受け継がれてきた伝統的な織物です。苧麻(ちょま)を原料とし、軽やかで通気性に優れた風合いが特徴です。 琉球王国時代、宮古島では上布を織ることが義務付けられ、王府への貢納布として献上されていました。こうした歴史からも、古くから重要な織物として受け継がれてきたことがわかります。

1879年に琉球王国が廃され沖縄県が誕生すると、紺上布が定着していきます。さらに大正期には締め機の導入により、生産は最盛期を迎えました。
1987年には、その高い技術と歴史的価値が認められ、重要無形文化財に指定されています。
重要無形文化財「宮古上布」の指定要件は、次のとおりです。
①すべて苧麻を手紡ぎした糸を使用しています。
②絣模様をつける場合は伝統的な手結い技法または手括りの方法によって行います。
③染色には純正の植物染料を使用しています。
④織りの工程はすべて手織りで行われます。
⑤洗濯(仕上げ加工)の際には木槌による手打ちが行われ、使用する糊は天然の
材料を用いて調整しています。


これらの厳格な技術を継承する団体として、宮古上布保存団体が重要無形文化財保持団体に認定されています。

宮古上布は、仕上げ工程の「砧打ち」によって、蝋を引いたような艶やかな光沢と美しい張りが生まれるのが特徴です。 また、非常に細い糸で織り上げられているため、薄くて軽く、涼やかな着心地も大きな魅力です。 一本の糸を作るだけでも数日を要するほど高度な技術が必要とされることから、非常に貴重な織物として、今日まで大切に受け継がれています。

上布~風土が育む麻のきもの~

かつて日本では、麻のきものは庶民の衣服として広く用いられていました。 しかし、江戸時代以降に木綿が普及すると、麻織物は次第に上層階級のきものとして用いられるようになります。 こうした流れの中で、琉球(沖縄)や越後(新潟)では精緻な技術による高品質な麻織物が発展し、日本を代表する伝統織物である「上布(じょうふ)」が生み出されました。

日本における「麻」とは
日本では、一般的な「麻」と、伝統織物である上布に用いられる麻とを区別して考えることがあります。 世界には麻と呼ばれる繊維がいくつか存在し、
●亜麻(リネン)
●ラミー
●ジュート
●マニラ麻

などさまざまな種類があります。 その中で、日本で古くから繊維素材として用いられてきたのは、主に大麻(たいま)と苧麻(ちょま)の二種類です。これらの繊維を、日本では総称して「麻」と呼んでいます。

宮古上布

宮古上布は、苧麻(ちょま)から手績みされた糸を用い、緻密な手仕事によって織り上げられる、日本を代表する伝統織物です。その軽やかさ、通気性の良さ、そして繊細で気品ある風合いは、他に類を見ない特別な魅力を備えています。

大麻と苧麻の違い
大麻(たいま)はクワ科の一年草で、日本では古くから繊維原料として利用されてきました。繊維が比較的太く、丈夫で厚手の布に仕上がるのが特徴です。
一方、苧麻(ちょま)はイラクサ科の植物で、非常に細くしなやかな糸を作ることができます。この糸から織られる布は薄く軽く、上質な麻織物として知られています。

上布(じょうふ)とは「薄くて上等な布」を意味し、苧麻などの細い糸を用いて織られる日本の伝統的な高級麻織物です。

上布の品質は原料だけでなく、
●糸の細さ
●糸の均一さ
●撚りの美しさ

といった糸の良し悪しによって大きく左右されます。
そのため、良質な上布を生み出すには、原料の選定から糸づくり、織りに至るまで、職人の高い技術と丁寧な手仕事が欠かせません。
苧麻の茎から採れる繊維を一本ずつ手で裂き、丁寧に績んで作られる極細の糸、その繊細さこそが、宮古上布ならではの美しい模様と風合いを生み出しています。

苧麻が糸になるまで

宮古島の苧麻は年に5回ほど収穫されますが、特に4月中旬ごろから採れる「ウリズンブー」が最も上質とされています。
宮古では、赤苧(アカブー)と青苧(アオブー)の二種類が用いられます。青苧は成長が早く生産量が多い一方で茎が太く、赤苧は茎が細く、細い糸を績むのに適しています。

①苧麻を刈る
4月中旬ごろ、根元が茶色く変わると刈り時を迎えます。刈り取った苧麻は、手でしごくようにして葉を落とします。

②苧麻の表皮を剥ぐ
茎を折り曲げ、表皮と芯の間に指を差し入れて、そのまま下へ引くようにして表皮をはいでいきます。

③水に浸ける
はいだ表皮は乾燥しないよう、すぐに水に浸けてあく抜きを行います。その後、繊維を取り出す工程に移ります。この作業では伝統的にアワビの殻が用いられ、現在では小刀を併用することもあります。

④繊維を取り出す
茎の根元と先端の向きを確認し、アワビの殻の縁に苧を差し込んで一気に引きます。すると繊維だけが残り、不要な部分をそぎ落とすことができます。

こうして取り出された苧麻は「元苧(ムトゥブー)」と呼ばれます。室内で乾燥させた後、糸を績む工程へと進みます。

苧績み(ウーウミ)

乾燥させた元苧を細く裂き、手作業でつなぎ合わせながら一本の糸にしていく作業を苧績み(ウーウミ)といいます。結び目を作らず、撚りをかけながらつないでいくのが特徴です。

①緯糸(よこいと)
細く裂いた繊維の根元と先端を撚り合わせ、結び目を作らず一本撚りでつないでいきます。

②経糸(たていと)
細く裂いた二本の繊維を撚り合わせ、一本の糸に仕上げます。

③糸を撚る
さらに強度を高めるため、糸車で撚りをかけます。宮古ではこの糸車を「マヤ」と呼び、台を足で押さえて固定しながら作業を行います。細い糸が見えやすいよう、床には黒い布を敷いています。

④出来上がった糸
これらの工程はすべて手作業で行われ、糸づくりだけでも半年ほどの時間を要します。宮古上布の糸は非常に細く、節のない美しさが特徴です。

絣を括る

織り上がりの模様を決めるため、伝統文様や新しい意匠をもとに絣図案を作成します。

①手括りによる絣づくり
絣糸を漂白した後、図案に基づいて模様の位置に印を付けます。その印に従い、糸で固く括ることで、染めた際に色が入らない部分をつくります。

②締め機を用いた絣づくり(藍十字絣)
藍十字絣では「締め機」と呼ばれる道具を使用します。この機には、太く丈夫な綿糸がダミーの経糸として張られています。
そこに宮古上布用の糸(経糸または緯糸)を横方向に強く入れ、織り進めていきます。糸が重なった部分は強く締められ、染色の際に藍が入りにくくなります。
このようにして模様を設計する工程は「絣筵」と呼ばれ、絣模様の精度を左右する重要な役割を担います。

③染色
地糸と絣糸は、島に自生する琉球藍やタデアイを用いて染められます。藍は甕に入れ、水あめや泡盛で発酵させながら、朝夕2回、約10日間かけて染め重ねます。深く美しい藍色に仕上げることで、絣模様がより鮮明に浮かび上がります。

染め上がった後、経糸と緯糸に分けて括り糸をほどき、絣模様が現れます。

織る

一本一本の糸を確認しながら、順番どおりに丁寧に整列させていきます。絣模様は、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の位置がわずかにずれるだけでも崩れてしまうため、この作業は非常に繊細に行われます。

①糸の整経
整えられた絣糸は、機織りの準備として、経糸を一本ずつ確認しながら配置されます。美しい絣模様を正確に織り上げるための重要な工程です。

②機掛け
経糸は綜絖(そうこう)や筬(おさ)に一本ずつ通され、織る際に正確に上下するようにセットされます。この工程によって、織りの準備が整います。

③機織り(絣合わせ)
織りが始まると、職人は緯糸を通しながら、経糸の絣模様の位置を目で確認し、指先で微調整を行います。柄が美しく揃うよう糸の位置を合わせるこの作業は「絣合わせ」と呼ばれ、熟練した技術が求められます。

洗濯

宮古上布の仕上げ工程は、品質と美しさを左右する重要な最終段階であり、宮古島ではこの工程を「洗濯(せんたく)」と呼びます。

紺上布とも称される黒に近い深い藍色をより引き立てるため、藪肉桂(やぶにっけい)を加えて煮立てた湯に反物を約一時間丁寧に浸します。これにより、繊維に自然な艶と奥行きのある色合いが生まれます。

その後、水洗いによって灰汁や不純物を取り除き、丁寧に絞って余分な水分を除去します。さらにサツマイモ由来のでんぷん糊を均一に施し、形を整えながら自然乾燥させ、生乾きの状態へと仕上げます。

こうして整えられた反物は、「砧打ち(きぬたうち)」と呼ばれる工程へと進みます。4キロの砧で何時間も打ち続けることで、布に美しい光沢が生まれ、ざらつきのある手触りは滑らかに変化していきます。これは繊維を引き締め、独特のしなやかさを生み出す伝統技法です。

これらすべての工程を経て、一反の宮古上布が完成します。年間の生産量はわずかであり、その一反一反には、長い年月をかけて受け継がれてきた技と職人の想いが込められています。

この貴重な宮古上布の魅力が、これからも変わることなく受け継がれていくことを願っています。

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