美の逸品
小宮家の江戸小紋
四代にわたり江戸小紋一筋の道を歩み続ける小宮家。
初代・康助が築いた技は、重要無形文化財「江戸小紋」保持者(人間国宝)となった二代・康孝へと受け継がれ、三代・康正、四代・康義、そして次の世代へと受け継がれています。
代々受け継がれてきた確かな技と美意識、そしてものづくりへの真摯な想いをご紹介します。
四代にわたり江戸小紋一筋の道を歩み続ける小宮家。
初代・康助が築いた技は、重要無形文化財「江戸小紋」保持者(人間国宝)となった二代・康孝へと受け継がれ、三代・康正、四代・康義、そして次の世代へと受け継がれています。
代々受け継がれてきた確かな技と美意識、そしてものづくりへの真摯な想いをご紹介します。
江戸小紋は、良い型紙、卓越した技術、そして上質な染料が揃って初めて生まれる染色です。そこには「最高の一枚をつくりたい」という職人たちの想いが込められています。
小宮家の初代・康助は、13歳で染色の道に入り、25歳で独立しました。何よりも型紙を大切にし、戦時中には貴重な型紙を守るため、箱を抱えて防空壕へ避難したと伝えられています。
代表作「三ツ割竹縞」は、卓越した技術がなければ染めることのできない名作です。長年使い続けられた型紙は使い尽くされ、現在では新たに彫る職人も少なく、「幻の縞」として受け継がれています。
一見無地に見えながら、近づくと繊細な文様が浮かび上がる江戸小紋。その控えめで奥深い美しさは、装う人の品格を引き立て、帯や小物次第で略礼装からおしゃれ着まで幅広く楽しめます。
小宮家では四代にわたり、技術だけでなく「美しいものを誠実につくる心」を受け継いできました。受け継がれた技と感性を大切にしながら、これからも江戸小紋の美しさを未来へ伝えてまいります。
「二ツ割竹縞」は、曲尺一寸(約3cm)の幅の中に30本もの細い筋を通した、極めて繊細な縞模様です。均一な縞ではなく、竹の節を思わせる自然な揺らぎを持ち、手彫りならではの温かみと趣を感じさせます。
この柄は、高度な型彫りと染色技術を必要とするため、限られた職人にしか表現できない江戸小紋を代表する名作の一つです。
小宮家では、初代・康助翁が生涯にわたり大切に使い続けた型紙によって染められてきました。しかし、その型紙は長年の使用によって役目を終え、現在では同じ技術で新たに彫る職人もほとんどおらず、「幻の柄」として語り継がれています。
緻密な手仕事によって生み出された「二ツ割竹縞」は、江戸小紋ならではの粋と美意識、そして小宮家に受け継がれてきた職人の技と心を今に伝える、かけがえのない意匠です。
小宮康孝は、1978年に重要無形文化財「江戸小紋」保持者(人間国宝)に認定されました。父・康助から受け継いだ技を礎に、古典柄の研究を重ね、現代の染色技術によって「布地が光を放つ」と称されるほどの美しい江戸小紋を生み出しました。
戦後の混乱を乗り越え、父から受け継いだ江戸小紋の技をさらに発展させ、日本を代表する染色家として高く評価されています。より精緻な染めを実現するため、型紙には密度の高い渋紙を用いる研究を重ね、耐久性と精度の向上に尽力しました。また、染料についても色あせしにくく、深みのある理想の色を求めて改良を重ね、江戸小紋の品質を大きく高めました。
代表作「菊通し」は、菊の花心を中心に九枚の花びらが整然と連なる、可憐さと気品を兼ね備えた意匠です。遠目には上品な無地のように映り、近づくほどに繊細な菊の文様が浮かび上がる様は、江戸小紋ならではの奥深い美しさを感じさせます。
伝統を守るだけでなく、型紙や染料の研究にも情熱を注ぎ、江戸小紋を工芸の域を超えた芸術へと高めた功績は、今日も小宮家のものづくりに受け継がれています。
「角紋入連子」は、三代・小宮康正を代表する意匠の一つです。
江戸小紋の中でも、とりわけ高度な技術を要するとされる「連子」に、複雑な角紋を巧みに組み合わせた格調高い作品です。
「連子」は、曲尺一寸(約三センチ)の幅に四十二本もの細い筋を染め上げる、極めて精緻な意匠です。息をのむほどの細やかな模様でありながら、どこか柔らかく気品を感じさせる美しさを備えています。
この難しい柄の中に角紋を違和感なく配することで、規則性の中に豊かな表情と奥行きが生まれ、三代・小宮康正ならではの卓越した技術と美意識が表現されています。
精緻な手仕事によって完成した「角紋入連子」は、三代・小宮康正の卓越した技術と美意識を象徴する作品であり、江戸小紋の伝統と新たな表現を今に伝えています。
「四ツ目入り 松皮菱」は、小宮康義が伝統工芸展に初入選を果たした記念すべき作品です。錐彫りによる松皮菱の中に可憐な花文様を配し、伝統的な意匠の中に繊細さと新しい感性を表現しています。
四代にわたり江戸小紋一筋の家業を受け継ぐ小宮康義は、曽祖父・康助、祖父・康孝、父・康正という名工のもとで育ちました。
本格的に江戸小紋の道へ進んだのは大学受験の頃。父・康正のもとで修業を始め、最も難しい技術の一つである「へら使い」から学び、長板の上で糊を均一にならす基礎を繰り返し身につけました。
受け継がれてきた確かな技術を礎に、伝統を大切に守りながら現代の感性を取り入れ、新たな江戸小紋の表現に挑み続けています。その作品には、小宮家四代にわたる技と美意識、そして未来へつなぐ想いが息づいています。